ワイドの本棚

【ワイドの本棚】下り坂をそろそろと下る(平田オリザ著・講談社現代新書)を読んで将来を現実的に考える

日本の将来は何色?

こんにちは。にっしーです。
ブログ第3弾は日本の将来をとても現実的に論じた本のレビューです。
下り坂をそろそろと下る(平田オリザ著・講談社現代新書)という本です。

ユニークな名前ですが、本名だそうです

著者の平田オリザは劇作家ですが、それにとどまらず大学に職位を持つ有識者で、対話コミュニケーションの専門書を著しています。また、地方創生や少子化の問題にもワークショップを通じて取り組んでいます。更に小説も書いていて、その映画版が賞をとるという多才ぶりです。
またご家族や親戚に有名人が多い方でもあります。

劇作家の書く日本衰退論

本書は簡単に言えば日本の将来を論じる本なのですが、
それとは一見縁遠い劇作家がこれを書くことになった経緯は、正直、わかりません。笑
わかりませんが、すでに日本で起きている社会問題と国の衰退との関連性を述べていること、
それからこの本で触れている「寂しさ」が衰退の問題の本質に近いと感じられたことに
感銘を受けましたので、ご紹介します。

タイトルの意味

日本の人口はこのまま何十年も減少を続けることが確実とされています。
本書は、この国が若年人口の減少により衰退するのは避けられないとしたうえで、私たちが
国の混乱・自滅を回避しつつ衰退の道をゆっくりと歩んでいかなければならない旨述べています。
本文では、このことを「下り坂を転げ落ちるのではなくそろそろと下る」と表現しています。
そのために3種類の「寂しさ」をしっかり受け止める必要があるそうです。

衰退に伴う「寂しさ」

私は日本の将来に関しては、AIやロボットの発達もあるのでさほど悲観的ではありませんでしたが、この3つの「寂しさ」を考えると日本の衰退は否定できない現実なのだと感じました。
本文では、そのなかで一番耐えがたいのが「アジア唯一の先進国ではなくなった」現実に対する寂しさだと書かれています。
確かに、その現実を認められない人たちを中心に引き起こされてそうなネット右翼やヘイトスピーチ等の社会問題もありますので、この寂しさと付き合うのは難しいのだと思います。
そうした、現実を認めたくない気持ちのでどころを「寂しさ」という言葉で表現し、さらに、衰退することの「寂しさ」と戦いながら国際社会をいかに生き延びていくのかを冷静に考えるのが我々の道なのであって「衰退=滅亡への第1歩」ではないということを文章で言ったところに、この本の一番の価値があると思いました。

劇場外での活動

以上は序文の内容で、本書のテーマとなります(大きなテーマだと思います)。
そののち、本論の部分では著者自身が参画してきた地方創生や少子化の問題への活動をいくつか紹介しています。「寂しさと向き合う」という本書のテーマと関連付けつつ説明しています。
地方創生や少子化の現状が詳細に書かれており、また著者独自の観点もあいまって興味深く読み進められました。

まとめ

こうして本書では、とても大きいテーマを著者の実際の活動を通じて論じています。だから無理もないのですが、そのテーマを具体的な話に落とし切れているとは言い難い所もあります。必要に応じて、小説や詩を引用してでわかりやすく説明してはいますが少し難しいです。
ですので、内容を消化するのに苦労する本とも言えます。
一方で、今まで触れたことのなかった考え方に触れることがきっとできる一冊でもあります。
この本は、将来について広い視点でじっくり考えてみたい・そのきっかけやヒントが欲しいという人に読んでもらいたいと思います。

ありがとうございました。

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